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輝ける島―獅子国紀行② 序章そのⅡ

  旅に出かけたところで、いきなり帰ってくる旅行記というのが存在するのかどうかわからないが、ともあれこの文章の場所は日本である。

  弟子の別荘で三里に灸をすえたり、位の高い女性に翻弄された顛末を語って無常観を表現したりといった手続きなしに、旅に出るところから書き始めて違和感がないのが現代の旅行記だが、もっと言えばこの文章は旅行の備忘録的なものですらない。

  備忘録として優れているのは、なんといってもミシェル・ド・モンテーニュ殿のイタリア旅行記だろう。原文を読んだことはないが、堀田さんの抄録を眺めただけでも、その詳細さ、目の付け所の面白さがうかがえる。そういうものが書きたいなと思って、ヒコーキの中でノートを付け始めたのである。

  ところが、詳細にいろいろ書くことができたのは行きのヒコーキの中だけであった。初めの意気込みだけが勝って、次第に尻すぼみとなり、三日坊主でやめてしまう筋トレのようなものとお考えいただくと、それは少し違う。
 書きたい気持ちだけはあったのだが、時間がなかったのである。とにかくタイトな日程で、朝が早く夜も遅いし、移動が多いと来ては、落ち着いてノートを広げる時間がない。だから、ひとところに座って落ち着いていたヒコーキの時間が終わると、あとは単なる出来事の羅列となった。

 それで、今旅行記を書くと大見得を切ってしまったものの、どうしようかと迷っている。旅行の日程を載せてみても仕方がないし、断片的なメモを再録してもつまらないだろうし。・・・というわけで、まだぼくは日本にいる。この際、しのごのいわないで、強制的に出発してしまった方がいいのかもしれない。・・・

 コロンボの空港に降り立つと、いきなり夏であった。北半球だから、スリランカも冬のはずであるが、日本の7月くらいの気温である。ゆっくりと流れてくるあの暑熱を含んだ空気が、見知らぬ土地のにおいを運んでくる。
 偉いお坊さんの招待客であったぼくたちは、経済担当大臣という人のとってくれた特別室に案内され、入り口でサリー姿の女性からブーゲンビリヤに似た花のレイをかけられた。甘い香りに、疲れた体が一瞬元気を取り戻す。

―以下次項。

     風海

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