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引っ越しとぎっくり腰

 ここ一両年、ずっと掃除とか引っ越しをしている。

 実家がリフォームするというので、自分の住んでいるアパートの片づけを何気なく始めたところ、やましたひでこさんの『断捨離のすすめ』という本を読み、掃除に拍車がかかった。はじめは、ちょっと見た目が良くなればというくらいだったが、本格的に大掃除となり、蔵書も三分の一くらい売るか捨てるかした。2010年の一月後半から二月にかけてである。

 その作業が終わったら、三月に実家のリフォームが始まり、母屋から離れへの引っ越し作業を手伝い、さらにそこから再び母屋へ戻る引っ越しとついでに大掃除が夏に行われた。箱を運んだり、車庫の中を整理したり、ともかく三人分くらいの引っ越し作業であった。

 そうして、満を持して今年の三月二十六日、自分の引っ越しがやってきた。さる事情で長年住んでいたS市はB・K公園の近くから、N市のS川沿いの桜の名所へ引っ越したのである。引っ越しや掃除などについては、だからもういっぱしの経験者であり、何の憂いもないと思っていた。

 ところが、伏兵は思わぬところにいたのである。
 ぎっくり腰である。

 引越す前に、九州某所に住む友人とメイルのやり取りをしていて、彼から、

 「腰などを痛めないように気を付けてください」

 と、忠告されていた。しかし、彼もそのすぐ後に、「ま、大丈夫だろうけどね」と、軽く流していたことだし、自分でもまさかこの時期にそうなるとは思ってもいなかった。

 忘れもしない三月二十二日。一度温かくなって寒の戻り、強烈に寒かった日に、先輩の某氏のうちで漢文を読んだのである。それも十時間近く、ほとんど動かずにやっていて、その時はよかったのだが、体は相当冷えていたのだろう。帰って上着をハンガーにかけようとしたとき、思わずくしゃみが出た拍子に、腰から背中にかけて冷たい激痛が走ったのである。

 ぎっくり腰のような腰痛は何度か経験があるが、今回はかなりひどかったようで、はじめて腰が抜けて立てない、という経験をした。一度座ると、心は立とうとし、足のつま先には意識が通るのに、腰と大腿部辺りにまったく力が入らず、どうやっても立ち上がれないのである。

 あれには参った。歩くのもそのほかの作業も、スロー再生のようにしか行えず、引っ越し当日までにやらねばならない残りの箱詰めなどを考えると、気が遠くなるようであった。

 ともあれ、無事に引っ越すことができ、本の詰まった五六十箱もの段ボールの山脈も取り片付けることができた。大きな変化があるときには何かしらアクシデントめいたものが付きまとうものであるが、今回はかなりすれすれであったと思う。まあ、この強烈な厄落としのおかげで、新生活の出発が祝福されたと思えばいいのである。

       風海

 

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