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アドベントの楽しみ

僧坊に住む子どもの元にも、クリスマスにはサンタクロースがやって来た。
その頃はクリスマスの宗教的な意味も分からず、家に煙突がないのを心配したり、うちには24日の夜に来るサンタが、同級生のY君ちには25日の夜に来ると聞いて、不思議に思ったりしながら、その日を心待ちにしていた。

そんな寺娘が、カトリックの女子高に進学し、修道院のシスターがお世話してくださる女子寮で生活を送ることになった。
クリスマス前には、アドベントのキャンドルに火を灯して聖歌を歌い、シスターお手製のクッキーを頬張る――と、過去となった今では、夢のようなイメージだけが残っている。
この寮のクリスマスイベントに、シークレット・パートナー、略してSP(シーパー)というものがあった。
待降節の期間中、愛神愛隣の精神でもって他人に優しくするというのが主眼で、くじ引きで決まった相手に、一日一つ、何かよいことをするというものだ。
具体的には、靴を磨いてあげたり、机の上に小さな贈り物をこっそり置いたりといったことを匿名で実行するのである。また反対に、自分も誰だかわからぬSPさんから「今日は寒かったですね」とか「いつもよく頑張っていますね」とか、温かい手紙をもらったりした。

パートナーが学校から帰る前や、お風呂に入っている間にこっそりと実行するのがスリリングで、また、自分のパートナーからは、今日はどんなサプライズがあるのかと想像するのが楽しかった。
SPが明かされるのは、クリスマス会である。自分に親切にしてくれたパートナーを言い当て、500円程度のプレゼントを受け取るという仕掛けになっており、クリスマス会の山場となっていた。

さて、このSPが私たち寮生の知らないところで、ちょっとした騒ぎを起こすことになる。
О先輩の御母堂が、先輩の所持品のなかにSPからの手紙を見つけた。そこに書かれた心温まるメッセージを読み、自分の娘は女ばかりの寮で、誰かとよからぬ関係になっているのではないかとご心配され、うちの母に電話で相談してきたのである。
母がいつになく口ごもりながら「寮にSPさんっていうイニシャルの人がいるの?あんたは大丈夫?」と言うので詳しく事情を聞き、あまりの勘違いに、質問に答えるのを忘れるほど笑った。

年をとる毎に、クリスマスを待つ気持ちは薄れているのだけれど、誰かの笑顔を思い浮かべるのは悪くないですね。

 空味

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