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想像してる暗い未来のヴィジョンは…

 益田ミリの『すーちゃん』、『結婚しなくていいですか―すーちゃんの明日』(ともに幻冬舎)を読む。かわいらしい絵柄で、のんびりした画面構成と話の展開に騙されてはいけない。これは恐ろしいマンガであった。がちょ~ん。

 帯に香山リカさんのコメントが付いていて、「『恋空』を読んでも『ホームレス中学生』を読んでも泣かなかったのに、号泣してしまった」という意味のことが書いてある。さすがに号泣はしなかったが、精神のかなり深いところに打撃を受けた。ど~ん。

 普段はそんなところを人には触らせない。しかし、油断があったのである。あの絵とたらたらした展開に気を許したのが間違いだった。このマンガは、心の奥の、最も見たくない部分を直撃する。それは、「不安」の倉庫である。

 すーちゃんは現在三十代半ば。カフェの店長で、仕事はあるしこつこつためた貯金もある。でも、何かに変わりたい、このままでいいのか、という漠然とした焦燥感を抱えている。芥川のいう漠然とした不安、ではなく、確固たる未来のヴィジョンとしての「不安」をどう乗り切るか、という過程で発生してくる、背を焼くような、それでいてどこか居心地のいい焦燥感なのである。

 マンガでは、いちおう今のままでいいよ、というメッセージが発信される。しかし、それは今にも茹でられようとしているカエルに対する慰めのようなものではないか。ぼくは、こんな恐ろしいマンガを読んだことがない。しかたなく、稲葉さん(B´Z)の絶叫で自分をごまかしてみる。

 「想像してる暗い未来のヴィジョンは、思い出の寄せ集めなのに…」

 

             風海

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