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古典問題

○以下の文章を読み、問題に答えよ。

 春の月もなくいとさうざうしき宵なりけり。なにがしの蔵人とて五位にてありける人のたづぬるかたのありて(1)、ひとり逢坂の関わたりをすぎゆくほどに、夜深くなりて道を失い馬まどひにけり。とかうするうちに、かたへにいほりのいとをかしげに住みなしたるあり。

(A)<鄙にはあれど、けしうはあらずなんおぼゆるほどに、>柴戸のひまより甘き香りのもれくる心地して、馬降り徒歩(かち)よりゆけば、縁の簀の子近くに「をのや」と書きなしたる手のいとつきづきしき、行灯のほの明きに見えたり。よべば、内よりいらへあり、いりにければ、いとどうつくしくはづかしげなる人の女房だちたるにはあらず、さりとて上ともみえずなるが、うちゑみてさしまねくさま、をかしきことかぎりなし。朱き酒(ささ)もて、蔵人にすすむ。いずくの産とも知られざるも、いと甘き香りに覚えず重ねたる。程なうして酔ひふす。

(B)<蔵人、これぞかりほるにやあらんとおぼえけるも、え起きあへず、夢に入りにけり。>とばかりあり、風の音におどろきてみれば、いほりなく、呼べどもいらへるかたなし。ただ草の上にまろび居たり。物の怪ともおもはれず、立たんとすれば、酒の酔ひにや、腰砕けにてえ立たず。やうやうあけぼのの雲しらじらと明りゆく。やがてこの人ひとり筆とり、たたう紙(2)に書きすさび、

  君をなみ尋ぬるかたの宵闇に小野の草原あやなかりけり

とこそ詠みける、とぞ。
(『こんにゃく物語』第三巻「五位の蔵人朱き酒(ささ)に酔ひたる事」)

問一 <>括弧部分 A、Bを現代語訳せよ。

問二 いつ「甘き香り」の酒を飲むのか。

注(1)女の家に行こうとしていたのである。
   (2)懐紙のこと。

                       出題人:風海

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