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夢が浮世か、浮世が夢か

 一月は初詣を始め、神さま、仏さまに向かって手を合わせる機会が多い。
こちらは神さま、仏さまを見つめる一方だけど、神仏の皆さんは私たちを
どんな感じで眺めていらっしゃるのだろうか?

 文楽の初春公演を観てドキッとさせられた。こちらに向かって神妙に手を合わせる顔を見たからである。
『壷坂観音霊験記』は盲人の沢市さんと妻お里さんの物語。二人は眼病封じで霊験あらたかな壷阪寺の観音さまにお参りする。

 「サアサア沢市様。観音様へ来たわいな。」とこちらに向かって手を合わせるののは、観客側がお寺の本堂という設定だ。
疱瘡であばた顔の沢市さんだが、ずいぶんな男前。夫を思うお里さんの一心にお祈りする顔も美しい。

〈あぁ、私たちが観音さまなのか!?〉っとハッと気づく。

 お話では、沢市さんは妻を不憫に思い、深い谷底へと身投げしてしまう。お里さんも夫を追って死出の旅。谷間へ落ちるのだが、観音さまの霊験によって
二人は命を取り戻し、沢市さんの目も見えるようになっているというストーリーだ。

 そもそもこの段は、「夢が浮世か浮世が夢か、夢てふ里に住みながら、住めば住むなる世の中に…」という言葉で始まる。

 もしかすると、目が見えるようになって生き返った世界は夢かもしれない。
いや、目の見えない中の辛い日々、生き返った後の世界、どちらが浮世か夢かわからない。

 ただ、観音さまに見立てられた観客が、手を合す二人の姿を見て〈救ってあげたい〉と思ったことは確かである。

                    空味子

 

Dscn5603_2 文楽劇場に奉納された鯛

           

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